細々と、でも楽しんで

 mixiでいくつかのコミュニティを運営しているが、中にはコミュニティと呼ぶにはあまりにもアレなものもある。どれも自分が設置したコミュニティなので思い入れは強いが、中でも2006年03月に開設したCOCOA_STAGECASTコミュニティはお気に入りである。

 まだ若かった頃、Apple Computer社が進めてきたプロジェクトの一つCOCOAのデモを見て感動したあの瞬間は今でも覚えている。子供たちが嬉々としてCOCOAを使ってプログラミングをしている姿、それも小学生中学年から中学生くらいの子たちが、だ。

 自分でもダウンロードし、苦手な英語のチュートリアルを読みながらチビチビと遊んだりもした。実にユニークなインターフェースと、なるほどっ! と思わず唸ってしまう機能の数々。脳みその柔らかい子どもたちの自由な発想を形にするために限りなく最適化された開発環境だった。

 いつか日本にもこの波は訪れるんだろうな、なんて思っていたが、そうこうしているうちに不景気のただ中で喘ぐApple Computer社の「事業仕分け」にヒットし、COCOAプロジェクトは埋没していった(蓮舫のせいではない)。

 やがて、スピンアウトしたラリー・テスラーらが新会社を立ち上げ、STAGECAST CreatorとしてCOCOAの魂は復活するのだが、その時の喜びは他人事ではなかった。アメリカにおいてはこのような開発環境がSTAGECAST社のみならず、いくつかの企業や大学で研究が進められ、日々進化している。

 そして今、日本でもコンピュータリテラシや、クリエイティブな感性を育む第三の教育分野としてプログラミングが注目されている。プログラミングといってもマイコン大作戦のマシュー・ラボートのようなバリバリのコンピュータヲタクを造成するのではなく、目的は前述の通り。

 日本でも大阪電気通信大学の兼宗先生が開発されたdolittle(ドリトル)やNTT コミュニケーション科学基礎研究所のViscuit(ビスケット)などは、世界の類似環境の中でも非常に高い水準のものである。

 先日、偶然オフィスに訪れたI本さんが、dolittleを使った子供向けセミナーを沼津で開催したいとお聞きし、「ついにこの地方都市にもこの波が来たか」と感慨深いものがあった。

 ロボット教室やLEGOエデュケーションとはことなり、それらよりもっと基本的な概念から「◯◯を作りましょう」のような固定されたものにしばられずに、自由な発想を求め、それを具現化していくための道具として使うのがSTAGECAST Creatorやdolittleなどで、どちらかと言うと日本人の苦手とする一角に刺激を与えるものだと思う。

 まあ、すぐがすぐ浸透していくカルチャーでは無いと思うが、こうした取り組みが地方でも行われるようになったことが実に心強い。例え細くとも長く続けて欲しい企画である。

 残念ながらSTAGECAST社のホームページは英語だが、その他のサイトは日本語で見ることができるので、有名どころのアドレスをご参考まで。

■Stagecast社「Stagecast Creator
http://www.stagecast.com


■Stagecast社にある「Apple Computer社時代の COCOA」ダウンロードページ(OS9以前じゃないと動かない)
http://www.stagecast.com/cgi-bin/templator.cgi?PAGE=Shared/documentation/COCOA_DOWNLOADS


■NTT コミュニケーション科学基礎研究所「Viscuit」日本語サイト
http://www.viscuit.com/


大阪電気通信大学 兼宗先生「dolittle」日本語サイト
http://dolittle.eplang.jp/


NPO View Point Research Institute「Squeak」日本語サイト
http://squeakland.jp/
(View Point Research Instituteは、韋駄天世代が「神」と仰ぐアラン・ケイが主宰をつとめるNPOである)