大人のオモチャ
私が小学二年生のある日、衝撃的な玩具が世に産まれた。その名は
しかし当時はメディアも今ほど発達しておらず、実際その存在を知ることになるのは小学四年生になってからである。
「いっけぇ〜、マグナムっ!」
いかん、いかん・・・。つい当時に戻ってしまった。
小学四年生当時、購読していない男子はいなかったと言っても過言ではない絶大な人気を誇るメディアがあった。
「コロコロコミック」だ。
笑ってしまう程分厚い月刊漫画雑誌で、そのクセA4より一回り小さい中途半端な大きさの雑誌だったと記憶しているが、そのコロコロコミックに連載された「ゼロヨンQ太」が私の、いや当時の少年達のチョロQ熱に火をつけたのである。
ここではゼロヨンQ太の内容について詳しく触れないが、毎月繰り広げられるチョロQワールドに夢中になり、実際のチョロQではできよう筈もないアクションに挑戦しては愛車を傷つけたものだ。続々と発売される新車や、亜種に心躍らせ、ある者は愛車をチューンし、またある者はお金の続く限りコレクションする。スタンダードなモデルでも一台350円、当時の我々にとっては決して安くはなかった。
すぐにブームは去るかと思いきや、チョロQブームは止む事を知らず、どんどんと進化を遂げて行ったのだ。そしてその進化の先に、少年の誰もが抱いた夢のチョロQ像・・・自分の意のままに操れるチョロQ。そんな夢を抱いた少年達も変声期を向え、ゼロヨンQ太の連載が終わる頃には叶わぬ夢である事を知るのである。
それから約20年
我が耳を、我が目を疑うようなニュースが飛び込んで来た。
「自在に操れるチョロQ、【Qステア】」
なんと、チョロQとほぼ同サイズのラジコンである。赤外線コントロールではあるものの、前進、後進、左右のステアリング、あろうことかダッシュボタンまでが用意されている。今ではすっかりオヤジになってしまった我々世代の心に火がついた。
大人のオモチャだ
さっそく、上土のマルサンホビーに足を運び、ランエボとインプレッサのセットをゲット! ちなみにマルサンホビーとは沼津市にあるホビーショップで、我々の少年時代はマルサンホビーで玩具やプラモを買うのがステータスであった。そんな「ボクとパパの店」マルサンホビーは、今も沼津の「ボクとパパ」に愛され続けているのである。ついでだが、もう少し年齢層の低い子供達の玩具はエビスヤ、トラディショナルな玩具は西屋といった具合に、沼津市にはTPOに併せた玩具店が存在している。
話しを戻そう。ランエボとインプレッサを箱から出し、マニュアルにちょこっと目を通す。なんとバンドが4チャンネルあり、最大4台を同時に走らせることができるのだ。
いよいよスイッチをオン!
チー、チー、という音を立てて走り出す。ダッシュボタンを押せばジーっと加速。たまらない瞬間だった。対象年齢は8歳以上・・・うん、俺は8歳以上だ、問題ない。
ノーマルなチョロQの存在は既に知っている私の息子(長男5歳、次男3歳)に見せると、「おおっ、かっこいいじゃん!」と言ってギィーーーーーー・・・・(気分は普通のチョロQ)。「床に置いてごらん」と言い、右手に隠したプロポを操る。走り出すチョロQ。
「・・・・なに?これ?」
「お父さんが走らせてるの?」
ここで種明かし。
長男「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
次男「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
妻は若干複雑な表情を浮かべたが、息子二人は大はしゃぎ。当然のことながら「貸して、貸して!」となる。長男にインプレッサ、次男にランエボを渡してみると、最初はゴチンゴチンぶつけていたが、すぐに慣れ、生意気にダッシュボタンまで使っている。
対象年齢8歳上なんだけど・・・まぁいい。
と、電池が終わる頃には「これ俺の」「これは俺の」と二人とも自分の愛車にしてしまった。これでは私が遊べない。感の鋭い妻は、既にこの後に取る私の行動を見抜いているようだった。
今ではインプレッサにランエボ、RX−8(私用)にRX−7(便宜上妻用)の四台が【日常使用する】Qステアとして存在している。
元来チョロQとはコレクション性の高いものである。人気モデルはすぐに売り切れてしまう上に、再販の見込みは限りなく少ない。そうなると、「これはっ!」と思った時に買わなければ手に入らないモデルが多いのが現実。
いつ妻に打ち明けようか・・・
まだ、ヒノメを見ていないQステアが数台、我が家に眠っている。