感極まる

「いずれにしましても、何の障害もなく産まれてくる可能性は極めて低いと思って下さい。宜しいですか。」

と、染色体異常に関する説明を延々とされた後、産婦人科の医師にこう告げられた。妻も産む決心をしていたし、私もどんなことがあっても育てる覚悟があったので、二人で「構いません」と答えた。

もう4年も前の話しになる。妻が次男を身ごもり、あと数ヶ月で出産というある時期、若干の変調がみられたために病院を移されたのだ。診察に行ったその日、即入院しなければいけないと告げられ、検査の後冒頭のセリフを聞かされたのである。

その後、2ヶ月以上に渡り妻は入院生活を強いられ、24時間休むことなく点滴を投与された。無力な私にできることは、実家の母の協力をあおぎ長男の面倒をみることと、毎日妻の見舞いに行くことくらい・・・。

長い入院生活の後、遂に次男が誕生。

見た目はなんの異常も無さそうだったが、漠然とした不安感が襲って来たのを今でも覚えている。

結果、全くの健康であり、心配されたような異常は見られないことがわかり安堵した。しかし医師は言う「まだ安心できませんから」。退院したあとも、何かが引っかかっているためか、ちょっとした異常でも大きな緊張が走る。便の色が白かった時は慌てた・・・妻から電話を受け取ると、上司に伝え職場からすっ飛んで帰った。「大丈夫、大丈夫・・・」と心で繰り返すものの、内心不安で仕方なかった。「胆道閉鎖症・・・まさか・・・くそったれ!!」駐車場につく頃には涙がこぼれていた。

結果は大したことではなかった。今考えれば心配のし過ぎだったのだが、医師からあんなことを言われていたからだろう。ちょっとしたことが、全て不安に繋がっていった。

そんな次男も、寝返りをし、ハイハイをし、つかまり立ちをし、ついには自力で歩き出し、言葉も話すようになる。成長は長男よりも早いようだ。三歳の誕生日を迎える頃には、体に関する不安は一切なくなっていた。

そして今日、次男が幼稚園に入園した。

目の前で笑っている次男。大きな声で返事をしている次男。園庭で走り回る次男。

長男の時の感動とは違った感動・・・何度か涙が出そうになったよ。

産まれて来てくれてありがとう!


【入園前日の次男。大きく見える右の方。左が長男】