自ら命を断つ

自殺のニュースが後を絶たない。

報道の偏りのせいか最近では若者の自殺がことさら多く目に飛び込んでくる。
また、その報道を受けた同世代が「私も・・・」「俺も・・・」と連鎖する波が再び起きているように思える。

しかし

警察庁の統計を見れば一目瞭然。若者(特に学生)の自殺者は全自殺者から見れば、その割合は極々僅かであり、その人数はここ約30年間殆ど変わっていない。
20代、30代、40代、50代、60代と、歳が増えるごとに自殺者は多いのが現状であり、健康問題や経済的問題を苦に自殺する人が圧倒的に多いのである。

平成10年

特に平成10年から自殺者は激増する。時代的背景で言えばバブル崩壊後のいわゆる「平成不況」下であり、団塊の世代団塊ジュニアが共に働き盛り世代に同居していた時期と重なる。
激増したのは無職、被雇用、自営の人たちの自殺だ。時代背景を見ればうなずけるし、今もなおこの人たちの自殺者の割合が多数を占め、主婦(主夫)の自殺者がこれに続く。
この人たちの殆どは経済的な理由を苦に自殺していることは推察するに難しくない。無論無職の人たちの中には高齢の方が多いため、健康上の理由ということも少なくないだろうが。

学生の自殺に話しを戻すと、十把一絡げでは現状が掴みにくいので、もう少し詳しく見てみる。

小学生は一桁、中学生になると60人強、高校生が200人強、大学生が400人強(いずれも平成17年度警察庁統計)であり、自殺理由もいじめや、友人・知人・教師等との対人関係等の「学校問題」が圧倒的に多い。その次が男女問題である。これが社会人となると、若干の男女問題は着いて回るものの、殆どは経済的な問題、健康問題となるのである。

そして

先述の通り、学生層の自殺者はここ数十年あまり変化が無いと書いたが、30年前と今とではその世代の人口は大幅に変化している。そう、減少しているのだ。それに対して、平成10年以降急増した無職、被雇用、自営、主婦(主夫)の自殺者数はここ10年ほど殆ど変わらないか、または減少傾向にある。これらの人たちは「高齢者」か、「高齢者予備軍」が大多数で、これから爆発的に増えて行く人口層であることは言うまでもない。

何をか言わんやである。

学生世代の自殺理由は察しがついており、それは報道からも統計からも見てとれる訳である。家庭問題も無視できないが、自殺の理由としては学校問題や、男女問題に比べればその割合はかなり低い。

いずれにせよ社会は、あるいは大人達はこの問題への対策にあまりに無力だ。

自殺者個々に対して様々な意見が飛び交うが、その「理由」はほぼ明確なものなのだから、社会ができることはまだまだある。渦中の学生の問題だけにせず、全ての人が一国の一大事として捉える必要があるだろう。

自殺の目的は「辛く苦しい現状からの解放」

目的を果たす為の手段は「死」だけではない筈である。