ウマヲコロセ バ ヨメガナク?

「この辺は昔ウマゴロシって呼ばれててね」

数年前、タクシーで自宅に変える途中に運転手さんが教えてくれた。今の実家がある付近をウマゴロシと言ったそうだ。その時はまだ移り住んで間もない頃で、近所の人からは比較的最近造成された新しい町としか聞いていなかった。確かに区画の整理の仕方を見ても整然としており、古い町ではないことは想像に難しくない。

しかし、ウマゴロシとは物騒な名前だ。それに昭和に入ってからできた新しい町にそんな無粋な名前をつけるだろうか(あるいみ粋か?)。きっと俗称なのだろう。

数日後、私と母は次のような会話をして大いに盛り上がったのである。

私 「そういえばこの辺り、昔はウマゴロシっていう地名だったらしいよ」
母 「バカだね、この辺りは昔ヨメナカセって呼ばれてたんだってば」
私 「随分詳しいね・・・」
母 「だって近所の○○さんが言っていたし、登記簿にもそう書いてあるって」
私 「登記簿に書いてあるならそれが正しいんだろうな」
母 「でしょ(勝ち誇る)」
私 「いずれにしても縁起でもない名前だな」

それから数年、再び別の人から「○○町(私の実家のある町)付近は昔ウマゴロシだか、ウシゴロシだかって地名だったってね」と聞かされた。

!?

私はすかさず「ヨメナカセじゃないんですか?」と聞き返す。すると
ヨメナカセ? それは聞いた事ないな。何しろいつの時代の話しかはっきりしないからね」とのこと。

こうなると謎は深まるばかり。

そしてつい先日、私は某資料館で昔の字界図をゲットし、早速私の実家付近の地名を見てみた。

(・・・牛殺)

あったぜ。ウマゴロシでは無かったものの、そこには確かにウシゴロシ(読みは定かではない)という文字が燦然と輝いていた! こうなると登記簿論を武器に私を撃破した母に伝えない訳にはいかない。

私 「あったぜ、ウシゴロシ」
母 「で?」
私 (地図のコピーを見せる)
母 「あんたウマゴロシって言ってなかった?」
私 「お、おぅ・・・」
母 「でも登記簿にあるんじゃ今はヨメゴロシでしょ」
私 「ヨメナカセでは・・・母さん」

いずれにせよ、「登記簿に記載されている」というのは未確認情報ながら依然強力な武器である。真偽の程を確かめねば! 私はこの後、とんでもない所へ行き、とんでもない資料を見、とんでもない母に電話をする事になる。

私 「あったぜ、ヨメナカセ」
母 「で?」
私 「やっぱり今はヨメナカセで残っているんだってさ」
母 「うん、そう言ったでしょ」
私 (分が悪い)
母 「で、どういう字を書くの?」
私 「嫁鳴瀬」
母 「ふ〜ん、面倒くさいね」

結局、嫁鳴瀬よりも前の字名が牛殺だったと結論に達した。ちなみに今の嫁鳴瀬に引っ越してくる前に住んでいた地名にも興味が湧き調べてみると

「尾丸」

お、おまる!? 別の読み方だよな、きっと・・・

ま、私は住む場所の地名には恵まれないらしいが、他にも面白い字名があって楽しませてもらった。以下、私の選ぶトップ5!

1)盗賊狩
2)五味屋敷
3)青大蛇窪
4)参佰伍拾間
5)恋路